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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(あ)2207号 決定 1957年2月07日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人中山義郎の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、原判決は所論の点について何等の判断を示していないから、所論は刑訴四〇五条三号の上告理由に当らない。(弁論を再開するか否かは、裁判所の裁量に属するこというまでもなく、原審では所論再開願を許さなかったものであること明らかであり、そして、その再開願の理由たる示談弁償については、控訴趣意書によれば、目下努力中とあり、その後原判決言渡まで示談の成立したことを確認すべき証跡がないのであるから、原審が弁論を再開しないで判決を言渡したのは正当である。仮りに、右再開を許さなかったことが、再開の請求を却下するという決定の形式によらなかった違法があるとしても、それは形式だけの違法であって、原判決に影響を及ぼさないこと明白である。所論引用の東京高等裁判所の判例(高等裁判所刑事判決特報一五号四七頁以下)は、弁論再開請求に対し何等の決定をしない違法と被告事件自体の情状についての審理不尽とを混同するものであって、誤りである。)

同第二点は、違憲又は違法をいうが、原判決の作成年月日は、所論のごとく昭和二七年二月一一日ではなく、同年三月一一日であること判決原本に徴し明白である。されば、同年二月一一日であることを前提とする違憲、違法の所論は、すべて、前提を欠き採るを得ない。

同第三点は、事実誤認、量刑不当の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、記録を調べても同四一一条二号、三号を適用すべきものとは認められない。

よって、刑訴四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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